終了者からのメッセージ of 都市システム科学域 ホームベージ

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平成24年 研修生 高橋 悠(町田市役所)

地方公務員として在職8年目を過ぎた辺りから、有識者や専門家の方と話す機会が増え、それに伴い「学問」の重要性を痛感するようになった。そこで、首都大学東京大学院都市環境科学研究科への派遣研修を希望し、1年間研修生として勉強することになった。
 都市システム科学域での勉強は、今まで習ってきた分野と異なることもあり、大変であったが、刺激的でもあった。「都市」についての様々なアプローチを学ぶことができ、独学では学べないような視点も先生方からたくさん教えていただいた。現役の院生との意見交換は、物事への考え方や捉え方の発見の場となり、研究に大いに役立った。何より先生方が繰り返しおっしゃってたことが「現場」に行くことであり、理論だけでも現場だけでもなく、両方を学び比較することの重要性を、再認識することができた。
 現在職場に戻り、大学院で得た知識や研究の方法などを生かし、よりよいサービスや事業を行うためにはどうすればよいか、試行錯誤しているところである。1年間という長いようで短い期間であったが、大学院で学んだことは私にとっては宝物である。指導教員である長野准教授を始め、都市システム科学域の先生方や講師としてご指導くださった先生方、院生のみなさんに心からお礼を言いたい。


平成9年博士前期課程修了 河村信治

ワークショップと都市科学研究科の縁に支えられて
河村信治(玉川研2期生、八戸工業高等専門学校総合科学科教授)

阪神淡路大震災のショックから間もない1995年4月に、新設2年目の都市科学研究科修士課程(当時)に社会人学生として入学しました。社会人といっても当時私は主にリクルート系の広告写真を生業とする零細自営の写真家で、研究のキャリアはありませんでした。90年頃からラディカルな環境教育・開発教育のNGOで実践される参加型学習=ワークショップ手法に出会い、はじめは写真家として教材開発にボランタリーに関わり、その後トレーニングを受けてファシリテーターも務めるようになりましたが、私がとくにワークショップに通底するコンセプトとして学んだのは識字教育運動家パウロ・フレイレの社会変革のための実践的方法論でした。日本でも環境、まちづくり、総合学習等さまざまな分野で参加型手法への関心が高まっていました。しかし草の根での実践以上に、行政が形式的な手法としてのワークショップの導入・普及を進めることに危機感を感じ、改めてちゃんと勉強し直さないと・・と思ったのが遅咲きの大学院志望の動機でした。
はたして中林一樹先生にきっかけをいただき入門した都市科学研究科では、若き気鋭の玉川先生の的確な研究指導を仰ぎ、結局欲を出して博士課程修了まで面倒をみていただくことになりました。課程を通しての二足草鞋生活は、身体的にはキツかった(寝不足)ものの楽しく充実した時間でした。また学際的な都市科学ゼミナールで専門外の研究を未消化でも聞いていたことが、あとで多くの異分野の研究者と交流する際に大きなメリットになっていることを感じています。
その後青森県八戸市の高専に職を得、ワークショップの縁で弘前大学教育学部の北原啓司先生らと地方都市の活性化に取り組むようになり、これをミッションと心得て活動が軌道に乗ってきたところで東日本大震災に遭遇しました。直後から関西(阪大、京大、関学ほか)の社会心理学系の防災研究者らと連携して被災者支援活動を続け、またあらためて市古先生(都市科学研究科の先輩!)・玉川先生らとともに被災地の復興まちづくりに取り組んでいる日々です。学生の参考にはならないキャリアながら多大なチャンスと縁を与えてもらったワークショップと研究室には深く感謝するばかりです。


平成24年博士課程修了 布川悠介

平成24年に修士課程を終えて、現在はGIS関連会社で働いている布川 悠介と申 します。私は学部から伊藤研究室に所属して、都市解析の研究を行ってきまし た。この研究室ではGISを使って研究を行うことが主となります。ここでのGIS との出会いが今の仕事に直結しています。

研究内容は「高円寺駅周辺におけるグラフィティ分布の空間解析」というもの で、3年間継続して同研究を行ってきました。「グラフィティって何?」と疑 問に思った方も多いと思います。グラフィティとは都市の外部空間にスプレー やマーカーで書かれた落書きのことです。みなさんも街で目にしたことがある のではないでしょうか。この研究、一見突拍子もないテーマに思えますが、突 き詰めていくと都市で独自の文化を持ち行動をする人たちの行動特性と都市要 素との関連が見えてきます。始めは私の興味から端を発した研究でしたが、そ こから都市との結びつき、ひいては都市へのまなざしが、都市との関わり方に よって多様なものであることに気づくことができました。このような独自性の 強いテーマを一つの研究成果として結実できたのも、恩師である伊藤先生、ひ いては都市システム科学域の先生方のお力によるものであったことは言うまで もありません。研究を通して都市と向き合うことで、都市の多様性を理解する 一助となり、都市について考え、学ぶことが一層楽しくなります。

この都市システム科学域にはさまざまな専門を持つ先生とさまざまなバックグ ラウンドを持つ学生が集まっています。定期に行われる研究発表会では研究室 にいるだけでは気づけない多くの言葉を諸先生方からいただき、先輩・後輩た ちはそれぞれ独自の研究を通して都市と向き合っており、多くの刺激を受けな がら研究を進めることができました。都市システム科学域の環境はまさに都市 が多様であることを体現した場所であったと実感しています。


平成21年博士課程修了 石川永子

大学を卒業し一度社会に出て働いてみると、仕事を通じて社会と接点を持ち、学生の頃には気付かなかった問題意識が芽生え、「もっと学びたい!」という知的好奇心と意欲が高まるという話をよく聞きます。本大学院は、そういった人達がのびのびと、学際的な視点で「都市」にまつわる諸問題について研究することができる場所だと思います。
私自身も、住宅設計の仕事を通して、個々の世帯のすまいだけでなく、「地域の住宅環境やそこに住む人々の暮らしをより良くするにはどうしたらよいか」について考えてみたくなりました。そして、特に自然災害が起きた後の復興まちづくりをテーマとして、まちづくり関係の仕事と二足のわらじを履きながら大学院に通いました。
本大学院の先生方や学生は学問領域の幅が広く、かつ、住民組織やNPOや行政等と連携して実践的な調査研究をされている方々が多く、積極的にそれらのプロジェクトに参加したりすることで、「都市科学」という経験的・実証的な視野を広げることができると思います。これは、修士・博士ともに少人数の教育環境によって実現するものです。
私は30歳近くになってから修士課程に入りましたが、ゼミでは若い後輩達にするどい指摘を受けたり、実務者として経験論に傾きがちな私の研究を、客観的・論理的なものになるよう先生方からご指導いただきました。
また、学生の年齢や国籍も多様で、積極的で魅力的な生き方をされている先輩・後輩達に励まされることも多く、この大学院で形成された人のつながりは、私にとって宝物となっています。現在、本大学院で学んだことを活かし、防災分野の研究所で研究を続けています。
「学びたい」という意欲をもった多くの方々が、本大学院で新たな発見されることを期待しています。


平成21年修士課程修了 田 龍一

初めまして。私は、博士後期課程1年生で 竹宮研究室に所属している韓国留学生の 田 龍一(Jeon, Yong-il)です。日本への留学理由と研究動機に関しては、私の住む韓国では、日本と同様に高齢社会を迎え、高齢者福祉施設へのニーズが高まってきています。そのことから、高齢者福祉施設環境のあり方に興味を抱き、2005年に日本へ留学し、2006年度に研究生として1年間をすごし、その後修士課程2年間を修了しました。研究を進めていくうちに、高齢者福祉施設が「亡くなる場所=終の棲家」になっているという現実に気づき、「人間が亡くなる場所のあり方」について真剣に考えるようになりました。また、調査の一環として訪れた「ホスピス・緩和ケア病棟」では、誰にも訪れる「死」について「死」を正面から受け止め、立ち向かっている方々を目の当たりにし、尊敬の念を抱くようになりました。上記等の経験から「終の棲家」となる場について感心を抱き、その人らしく「死」を迎えることのできる「場所」のあり方について、建築計画的視点から関わることを望み、研究して行きたいと考えています。
また、私が所属する都市環境科学研究科・都市システム科学域は、「都市」における様々な問題に関して多角度からアプローチを行い、それぞれの視点から「都市」という一つのテーマに関して、研究を行うことを目的としている学域です。昨年度行われた修士論文の口頭質疑時を振り返ると、先生方々より各専門分野からのアドバイスして頂くことができ、改めて恵まれた環境で研究を進めることができていることを実感することができました。
具体的には、「がん医療の発展に対応した医療施設計画に関する研究」と題した研究を行うにあたり、がん医療のアプローチとして医学分野の時点、がん医療政策のアプローチとしては国の行政分野の時点など、各分野の先生方々からアドバイスを頂き、それらを踏まえ、現在、建築計画的視点から研究を進めています。
最後に、「都市」について考えるにあたり、つまり、私自身は建築学域からの「都市」の一要表へのアプローチという形になっておりますが、国、文化、学域を超えたこの都市システム科学域は、「都市」を語る上で要不可欠な最適環境、場所であるでしょう。


平成18年博士前期課程修了 北村道一

初めまして。修士課程1年竹宮研究室の北村です。入学してから早くも3か月が過ぎようとしています。私が都市科学研究科への進学を決意したのも昨年のちょうど今頃だったと思います。

私は都立大の建築学科出身で、「工学研究科建築学専攻」への進学の選択肢もありましたが、最終的には「都市科学研究科」を選択しました。迷いはありませんでした。
進学を決めた理由のひとつに、学部時代からの指導教官である竹宮先生のご指導を引き続き授かりたいという気持ちがありました。またその一方で、都市科学研究科そのものの持つ魅力も感じていました。

この研究科では都市を構成している複雑な事象を扱っています。様々なバックグラウンドをもち、それぞれの分野から独自の研究を行っている充実の教授陣。そのもとで勉学に励む諸先輩方。「この研究科なら、自分の知り得なかった知識を獲得できる。」そう思ったのが進学の決め手でした。

入学後まず感じたこと。自分の選択はやはり間違っていなかった!毎日の授業と課題、研究室の活動に追われる忙しい日々の中にも、新しい発見や驚きがたくさん潜んでいます。自分の専門としてきたこと以外の授業はまさに冒険。社会学、都市交通、法律・制度、公衆衛生、GISなど今まで触れることのなかった学問領域は非常に刺激的かつ魅力的です。建築の講義を中心に受けてきた学部生時代には考えられないことでした。また、極めて少人数で行われる講義にはきめ細かなプログラムが用意されており、納得のいかないことにはとことん質問できる環境です。幅広く都市について考える機会を得られてことは、今後私の専門である建築を考えていく上でも非常に大きな意味を持つであろうと思われます。

また、学生については、専門分野が多岐に渡るだけでなく、年齢も幅広く分布しており、海外からの留学生もたくさんいます。そうした先輩方や仲間たちとの会話も新鮮で活気あふれるものです。自らの見聞を広め、自分を磨く場としてうってつけではないでしょうか。きっと同期の仲間たちも同じように感じていることと思います。

この研究科では、それぞれの研究を進めていく上で自由闊達な議論を重ね、いろいろな人たちからのアドバイスを頂くことができるでしょう。都市科学研究科は都市について考察し、研究を進めていくにあたって最適な環境であるといえます。自分が納得のいく、充実した修士の2年間を過ごしたいと思っています。


平成18年博士後期課程修了 高橋 俊彦

還暦過ぎの大学院生、若者に混じっての講義・試験を受け人の倍の単位を貪っているうちに修士2年が修了、思いもかけなかった博士課程へ!・・・・・・・なんとも物好きな人物である。

高齢社会の長い余生を有意義に過ごそうと地域コミュニティのボランティア活動に勤しんだが質的な限界を感じ、コミュニティ社会論・都市計画論・市民自治論・健康を基本とした市民生きがい論など欠けている知識が欲しくなっていた時に、学際的で社会人枠もある都市科学研究所の存在を知り、進学を決意したが想像以上にエンパワーされる日々を過ごしている。

最新の共分散構造分析手法まで学び、人間の健康が何で規定され人間の幸せはどうして決まるのか因果関係がアンケート調査から論理的に導き出せるとは想定外のことであり学問の進歩に隔世の驚嘆、都市計画論・ユニバーサルデザイン・GIS・環境経済学なども新しい視点を与えてくれあふれんばかりの収穫があり、視野拡大に役立った。理系文系の先端的な教授陣が揃っており開かれた自由な論議、これからの世の中に必要な多様性・総合的な視点に適合した少人数制教育環境、個別ゼミの他全教員・全学生参加の全体ゼミ、各種セミナなどを通した多様で懇切な論文作成指導もある。

現代若者の感性や女性の意欲に新しい未来を感じながら、外国人留学生との国際親善にも貢献でき、卒業生を含んだメーリングリストの人脈ネットなど、闊達な雰囲気は他に変えがたい。

日本は閉塞感を脱却できず21世紀型の社会システム創造ができずに蠢いており、都市問題・環境問題などグローバルな世づくりニーズは枚挙にいとまない。豊富な社会的蓄積のある高齢者が協調する場を醸成し新しいクリエーターとして、高齢者ベンチャー・高齢者フリーターなど生涯現役活動を通して、柔軟な頭を持ったシニアパワーの円熟した活躍を誘発し、シニアだからこそできる新しい生き方を見出しはぐくむ場としての「都市科学大学院」への期待は無限であろう。新しい時代ニーズに満ちた地域との共生可能な開かれた大学へと進化する場で、鋭い洞察力を磨き市民自治ルネッサンスに参画創造貢献して行く未来志向のシニアであり続けたい!
・・・と思ってる。


平成17年博士前期(修士)課程修了 服部 祐司

都市科学研究科に入学してから、あっという間に2ヶ月が経ってしまいました、というのも、この2ヶ月の間が非常に充実したものであったからだと思います。この研究科の特徴が私に合っていたからなのかもしれません。

この研究科の特徴というのは、様々なバックグラウンドを持つ人たちと一緒に研究することが出来ることだと思います。私の机の両隣は文学部出身の人たちで、後ろの机には社会学の勉強をしている人がいます。そんな人たちが、それぞれの視点で都市に関する研究をしています。実に学際的な研究科ではないでしょうか。

授業についても同様で、私は土木工学科出身ですが、自分の専門に近い講義はもちろん、都市経済論や都市制度論など、今まではほとんど縁のなかったような講義も選択することが出来ます。

最近住民の、都市に対する関心が高まってきているように感じます。同時に都市という言葉も頻繁に耳にするようになりましたが、都市とは非常に漠然とした言葉ではないでしょうか。都市は構造物等といった土木建築的なものから、地価といった経済的なもの、法律や条例といった制度的なものなど、実に様々な事柄が複雑に影響をしあって構成されます。ですから、他の専門分野に関する知識を身に付けられ、なお自分とは別の専門分野を研究している人の意見を身近で聞くことが出来る都市科学研究科は、非常に恵まれた環境であるといえます。都市について考えるにあたって、この研究科は最適な場所だと思います。


平成17年博士後期課程修了 西田奈保子

「研究者として、あなたは兎か亀か」と問われたことがありますか。少しづつしか進めないので、とりあえず私は亀だな、と思っていると、となりの留学生が「兎です。中国では兎が勝ちます」と言ってニンヤリしていました。わたしたちは、研究スタイルも、性格も、もちろん研究テーマもずいぶん違います。どんな道のりをどのくらいの速度で、しかも何を競争するレースに出場するのか等、自分自身のなかで、選択したり、折り合いをつけなければならない問題は数多くあります。都市科学研究科は、わたしにとって、このような問題に向き合う場でもあります。

本研究科の大きな特徴のひとつは、教員や学生の学問経験、研究テーマをはじめとして、学生の年齢や国籍にも幅があることです。その分、差異のもつ意味について考え込むこともありますし、逆に共感を覚えることもしばしばです。そのなかで、自分の問題意識を膨らませ、広がりをもたせることができたならば、都市研を選んでよかったと感じると思います。都市研で皆さんが感じるであろうこれらの経験は、実際に都市で起きている現象を捉えようとする時にとても役立ちます。よく言われるように、都市問題は複合的な現象だからです。

大きな特徴のもう一つ、研究にあたって、経験的・実証的なアプローチを重視していることです。多くの人が都市の現場を実際に歩き、時間をかけて対象にアプローチしています。こうして、例えばそれまで本の中の現実でしかなかったことが、自分自身の目の前に広がっていることを知ったり、本の中では知りえなかった現実に迫ることになったりするのだと思います。そして、どんな考えに基づいて実際の情報を集めようとするか、あるいは集めた情報をどう考察するかといった点は、私たち自身の問題設定にかかわってきます。兎の留学生は、今は遠く外国で研究に励んでいます。たまの近況報告は、お互いにたわいのないものだったりしますが、それでも、選んだ研究テーマをできるだけ突き詰めてみたいという気持ちは、共通しているのではないかと思っています。みなさんがこの研究科で、それぞれの課題に挑戦し、新しい発見をされることを期待しています。