JABEEの認定・審査について

5. JABEE 認定審査の手順と方法

  JABEEは,認定・審査を希望する高等教育機関が申請したプログラムについて審査を行い,認定基準をすべて満足するプログラムを合格認定します.審査は,実際にはJABEEの正会員である学協会または複数の学協会(審査チーム派遣機関)により構成される「分野別審査委員会」の中の「審査チーム」が行います.審査チームは,高等教育機関から提出された「自己点検書」の検討と「実地審査」による検証を行い,当該教育プログラムが認定基準を全て満足しているか否か,またその満足度の程度などを審査します.審査チームにより提出される審査結果は,分野別審査委員会において検討・調整され,最終審査結果がまとめられます.最終審査結果はJABEEに送付され,JABEE認定・審査調整委員会において審議・調整され,改めて確定されます.確定した審査(審議)結果を基に,JABEE認定・審査調整委員会はプログラム認定可否の原案を作成します.このプログラム認定可否原案は,JABEE認定委員会において審議・調整され,最終的にプログラム認定結果が確定されます.プログラム認定結果はJABEE理事会において承認され,教育プログラム認定の可否が確定します.

6. 認定・審査の基本概念

 ブログラム認定・審査の目的は,大きく次の4項目と考えられます.


  1. 技術者教育の質の保証
  2. 新教育システムの導入による継続的な技術者教育プログラムの発展
  3. 技術者教育評価方法の発展促進および評価システムの構築
  4. 教員による教育活動組織,教員の責務・役割の明確化,教員による教育貢献度評価システム構築

一般的に「技術者」とは技術業に携わる専門職業人を示します,JABEEが対象とする「技術者」には,大学教員などの研究者も含まれています.


 認定の対象は,文部科学省が承認する4年生大学学部教育および工業・技術系高等専門学校・短期大学の教育に2年制の専攻科を加えた教育におけるプログラムです.なお,1)技術者の基礎教育を行うブログラムであれば学部,学科は問わない.2)プログラムは,学科,コース,専修科などの専門科目のカリキュラムだけではなく,入学から卒業までのすべてのカリキュラム,教育プロセス,教育環境を含む.3)プログラムは,1学科1プログラムに限定するものではない.1学科で複数のプログラムを持つことは可能である.4)プログラムは,複数の学科でプログラムを構成することも可能である.また,一部の科目を他大学との連携により学習するプログラムであってもよい,とされています.


 なお,1学科1プログラムの場合,プログラム終了と学科卒業の判定基準が異なるときには,プログラムの認定申請は受理されないという点が重要です.


 認定の有効期間は,基本的には5年間です.合格認定を受けた年度の修了生から5年間の修了生が,認定プログラムの修了生となります.認定プログラム名は5年間公表されますが,欠陥ありと判定された認定プログラムには,改善を促す目的で短縮した有効期間が設定されます.この場合,有効期間は教育機関には通知されますが,公表はされません.なお,認定プログラムをもつ当該高等教育機関には,1)有効期間中,認定維持料をJABEEに収める,2)継続して認定を受けるためには最終有効年度の翌年内に改めて認定・審査をうける,などの義務が生じます.


 プログラムの認定・審査にあたっての基本的な方針を以下に列挙します.


  1. 自己点検書の審査と実地審査により行う.
  2. 分野別要件とJABEE認定基準との照合により行う.
  3. プログラムの独自性は尊重する.
  4. 教育機関の教育改善努力は理解し,支援する.

他の第三者機関などで十分に審査されていると判断される審査項目に関しては,その資料を参考にします. 認定・審査は以下に示すような手順で進められます.


 JABEE認定・審査業務は,高等教育機関からのJABEEへの受審申請により開始します.引き続き,教育機関より自己点検書がJABEEおよび審査チーム派遣機関に関連資料を添えて提出されます.自己点検書は,審査長と審査員およびオブザーバにより構成される審査チームによって審査される.審査は,分野別要件とJABEE認定基準と照合することにより行われる.自己点検書の審査により,プログラムの問題点や不明な点が抽出されます.そこで,審査チームにより,問題点の確認および不明な点の解明のために実地審査が行われます.実地審査は,自己点検書の審査と同様に,分野別用件とJABEE認定基準と照合し,それらをすべて満足するか否かということを検証することにより進められます.実地審査後,審査チームにより作成されるプログラム点検書(その4)を基とした一次報告書に始まり,各機関により種々の審査・評価報告書が作成されます.最終的には,JABEE認定委員会が認定の可否を決定し,それがJABEE理事会において承認され当該教育プログラムの認定・審査は終了します.なお,審査チームの一員として認められるオブザーバは,審査員になるための研修者と審査の実態を知るための参加者に分けられます.オブザーバは,自らの意志で判定や審査を行うことはできませんが,審査長の判断により参考意見を述べることはできます.

参考文献

  • 技術士会:技術士CPD.http://www.engineer.or.jp/sub05/
  • JABEE:技術者教育認定制度とは.http://www.jabee.org/about_jabee/accreditation_system/
  • 金田博彰(2002):JABEE認定・審査の手順と方法.「地球・資源およびその関連分野」平成14年度第2回審査員研修会資料,57-64,地球・資源分野審査委員会.
  • 大橋秀雄(2004):JABEEの理解を深めるために.
  • 山冨二郎(2002):技術者教育プログラムの外部認定が持つ意義と役割.「地球・資源およびその関連分野」平成14年度第2回審査員研修会資料,1-33,地球・資源分野審査委員会.